産業構造分析:農業の町・ものづくりの町・サービス業の町、日本の自治体を3タイプに分ける
全国1,740自治体の就業者数を産業別に見ると、就業者の平均10.4%が第1次産業、25.2%が第2次産業、64.3%が第3次産業に従事しています。しかし自治体ごとに見ると、農業中心・製造業中心・サービス業中心という、まったく異なる経済構造を持つ町が存在します。
公開日:2026年7月29日
データ更新日:2026年7月15日(e-Stat 公開データに基づき自動更新)
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自治体の経済は、人口や財政力だけでなく「住民がどんな 仕事に就いているか」という産業構造によっても大きく 性格が変わります。就業者を第1次産業(農業・林業・ 漁業)、第2次産業(製造業・建設業・鉱業)、第3次産業 (商業・サービス業など)に分けて全国1,740自治体を比較すると、それぞれの産業が突出して多い、 個性豊かな町が見えてきました。数字の裏には、その 土地ならではの歴史や企業の存在が隠れています。
第1次産業の町TOP10:農業・漁業が主役
1位の長野県川上村は、就業者の75.9%が第1次産業に従事しています。標高1000m超の高原 気候を活かしたレタス栽培で知られ、農家1戸あたりの 所得が全国トップクラスとも言われる「稼ぐ農業」の 町です。2位の秋田県大潟村は、平均世帯人員ランキング の記事でも紹介した、八郎潟を干拓して作られた計画 農村で、大規模稲作が中心産業です。北海道の町村が 複数ランクインしているのも特徴で、酪農・畑作が 地域経済の根幹を支えています。
第2次産業の町TOP10:ものづくりが主役
1位の山梨県忍野村は、産業用ロボット大手ファナックの 本社・工場が立地する町として知られ、就業者の53.6%が第2次産業に従事しています。2位の群馬県大泉町は SUBARU(旧富士重工業)の主力工場を抱え、工場で働く 日系ブラジル人住民が多いことでも知られる町です。 このほか、愛知県高浜市・碧南市(三河地方の自動車 部品産業集積地)、静岡県湖西市(ヤマハ発動機・スズキ 関連)など、特定の大手メーカーや産業集積地を核とした 「企業城下町」がずらりと並びました。
上位20自治体まで範囲を広げると、愛知県の自治体が 7つもランクインします。トヨタ自動車の本拠地である 豊田市自身も45.6%と高い水準にあり、西尾市・刈谷市・ 知立市・幸田町など、トヨタグループの部品メーカーが 集積する「中京工業地帯」の自治体が軒並み上位に 並びました。1つの巨大企業グループが、県内の広い 範囲にわたって産業構造そのものを形作っている様子が、 このデータからも読み取れます。
第3次産業の町TOP10:サービス業が主役
このグラフには、性格の異なる2つのグループが混在して います。1つは群馬県草津町、神奈川県箱根町といった 温泉・観光地、沖縄県渡嘉敷村・座間味村といったダイビング で有名な離島リゾートで、宿泊・飲食・観光関連の サービス業が就業者の9割前後を占めています。もう1つは 東京都千代田区・渋谷区・港区・新宿区といった、企業の 本社機能やオフィスが集積する都心部です。同じ 「サービス業中心」でも、観光型と業務中心型という、 異なる経済構造が背景にあります。
なお、今回紹介した3つのタイプはいずれも「極端な 例」です。実際には大多数の自治体が、第1〜3次産業 をバランスよく組み合わせた、いわば「標準的」な 産業構造を持っています。全国平均は第1次産業10.4%・第2次産業25.2%・第3次産業64.3%ですが、この平均に近い構成を持つ自治体こそが、 実は最も「典型的な日本の町」だと言えるかもしれません。
産業構造は自治体の「個性」を映す鏡
今回の分析から見えてくるのは、日本の1741自治体が 決して均質ではなく、農業・製造業・サービス業という 異なる経済基盤の上に成り立っているという事実です。 財政力指数との関係を扱った記事でも、原子力発電所や 空港といった特定の産業・施設が財政力を大きく左右 することを紹介しましたが、製造業中心の町(群馬県 大泉町、愛知県高浜市など)も同様に、特定企業の業績や 設備投資の動向が、地域経済全体を大きく左右する 構造にあります。
こうした「企業城下町」型の自治体は、その企業が 好調な間は雇用も税収も安定しますが、工場の縮小・ 移転が起きれば、地域経済全体が大きな打撃を受ける リスクも抱えています。完全失業率ランキング分析の 記事で取り上げた福岡県筑豊地方の旧産炭地は、まさに その好例です。産業構造を知ることは、その地域の 「強み」と同時に「潜在的なリスク」を知ることでも あります。
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データを読むときの注意点
産業別就業者数は、その自治体に「居住する」就業者を 産業別に分類した統計であり、必ずしも「その自治体内で 働いている」人数とは一致しません。都市部への通勤者が 多い自治体では、居住地ベースの産業構成と、実際に その土地で行われている経済活動の構成にズレが生じる 場合があります。とはいえ、製造業就業者比率が突出して 高い自治体の多くは、実際にその土地に大規模な工場が 立地しているケースがほとんどであり、今回紹介した 町については、統計と実態はおおむね一致していると 考えられます。それでも、通勤・通学による人口移動が 大きい大都市近郊の自治体を扱う際には、この点を 念頭に置いておくと、データをより正確に読み解く ことができます。
まとめ
全国の自治体を産業構造で見ると、平均的には 第1次産業10.4%・第2次産業25.2%・第3次産業64.3%という構成ですが、個別に見れば農業が9割近い村、 製造業が半数を占める企業城下町、サービス業が9割を 超える観光地・オフィス街と、まったく異なる経済の 顔を持つ自治体が数多く存在します。人口・高齢化・ 財政といった指標だけでなく、産業構造という切り口を 加えることで、それぞれの自治体が持つ経済的な個性が より立体的に見えてきます。産業構造という切り口は、 人口や財政だけでは見えてこない、その土地固有の 経済の成り立ちを教えてくれる貴重なデータです。