人口密度と財政力指数の関係:相関係数0.73、それでも過疎地なのに財政が豊かな自治体がある理由
全国1,740自治体のデータで人口密度(対数値)と財政力指数の相関係数を計算すると0.73と強い正の相関が見られました。人口密度が高い都市部ほど財政力が強い傾向がある一方、青森県六ヶ所村や北海道泊村のように、人口密度が極めて低いのに財政力指数が1を超える自治体には、共通した産業基盤がありました。
公開日:2026年7月25日
データ更新日:2026年7月15日(e-Stat 公開データに基づき自動更新)
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財政力指数ランキング分析の記事では人口規模と財政力の 関係を扱いましたが、今回は「人口密度」という もう1つの物差しで財政力との関係を見てみます。全国1,740自治体のデータで人口密度(対数値)と財政力指数の 相関係数を計算すると、0.73という強い正の相関が確認できました。ところが、 人口密度が極めて低い過疎地域の中に、財政力指数が 1を超える、都市部顔負けの「豊かな」自治体が いくつも存在します。
人口密度が上がるほど財政力指数も上がる
全自治体を人口密度の低い順に4等分すると、最も密度が 低いグループ(平均24人/km²)の平均財政力指数は0.249である一方、最も密度が高いグループ(平均3769人/km²)では0.806まで上昇しており、人口が集積する都市ほど税収基盤が 豊かになるという、経済学でいう「集積の経済」を 裏付ける結果になっています。
過疎地なのに財政が豊かな自治体TOP15
このグラフは、人口密度が下位25%(52人/km²以下)に入る過疎的な自治体の中で、財政力指数 が高い順に15自治体を並べたものです。1位の青森県 六ヶ所村は財政力指数1.74と、東京23区の平均を大きく上回る水準にあります。
例外の正体は原子力関連施設
TOP15の顔ぶれを見ると、青森県六ヶ所村(使用済み 核燃料の再処理施設)、北海道泊村(泊発電所)、福島県 大熊町・富岡町・楢葉町(福島第一・第二原子力発電所)、 福井県おおい町(大飯発電所)、青森県東通村(東通 原子力発電所)など、7自治体が原子力発電関連施設の立地自治体です。 高齢化率と財政力指数の関係を扱った記事でも触れた とおり、原子力施設は固定資産税収入と電源立地地域 対策交付金という2つの経路で、人口規模とは無関係に 財政力指数を大きく押し上げます。人口密度で見ても、 この構造がはっきりと表れる結果になりました。
残りの顔ぶれは、新潟県湯沢町(スキーリゾート・ 別荘地としての固定資産税収入)、群馬県上野村 (林業・製造業を中心とした独自の産業基盤)、神奈川県 清川村・山北町(工場立地や別荘地)など、観光・ 製造業を基盤とする自治体です。いずれも人口自体は 少ないものの、地域外から資金が流入する産業を 持っている点で共通しています。
「密度と財政力」から見える2つの豊かさ
今回の分析から、自治体の財政的な豊かさには大きく 2つの経路があることが見えてきます。1つは都市部の ように、多くの企業・住民が密集することで税収基盤 そのものが大きくなる「集積型」の豊かさです。もう 1つは、原子力施設や大規模工場のように、たとえ 人口が少なくても、単一の大規模な固定資産・産業が 立地することで税収が生まれる「拠点型」の豊かさ です。人口密度という指標は、前者の「集積型」の 豊かさとは強く連動しますが、後者の「拠点型」の 豊かさとはまったく連動しません。全国の自治体の 財政力を理解するには、この2つの経路を区別して 考える必要があります。
なお、「拠点型」の豊かさは、その拠点となる産業や 施設が失われた場合に急激に縮小するリスクを 伴います。実際、かつて炭鉱で栄えた旧産炭都市の 多くは、閉山後に財政力指数が大きく低下した歴史が あります。人口密度と高齢化率の関係を扱った記事で 取り上げた旧産炭都市が、今回の分析ではむしろ 「密度は高いが財政力は平均的」という位置づけに とどまっているのは、まさにこの縮小を経た結果だと 考えられます。
逆に「密集しているのに財政が弱い」自治体もある
今回の分析とは逆に、人口密度が高いにもかかわらず 財政力指数が低い自治体も存在します。代表的なのが 東京都荒川区・足立区・北区・葛飾区で、東京23区の 中では人口密度が高い一方、財政力指数は他の区に 比べて低い水準にあります。同じ東京23区でも、 企業の本社機能が集積する千代田区・港区・渋谷区 などと比べると、住宅地としての性格が強い区では 税収基盤に差が生じることを示しています。人口密度 という「量」だけでは、その地域の財政的な豊かさを 正確に測ることはできません。
2つの記事から見える財政力指数の本質
高齢化率と財政力指数の関係を扱った記事、そして 今回の人口密度と財政力指数の関係を扱った記事、 どちらでも同じ顔ぶれの原子力・エネルギー関連 施設立地自治体が「例外」として登場しました。これは 偶然ではなく、財政力指数を決めているのが人口の 年齢構成でも密度でもなく、その地域にどれだけの 固定資産・産業基盤があるかという、もっと直接的な 要因であることを示しています。人口統計だけを 見て自治体の財政状況を推測するのではなく、その 地域にどのような産業・施設が立地しているかを あわせて確認することが欠かせません。
データを読むときの注意点
今回の相関係数の計算には、人口密度の分布が極めて 広範囲にわたるため、対数変換した値を用いています。 また、原子力関連施設が立地する自治体の財政力指数の 高さは、施設の稼働状況や将来の廃炉、電源立地地域 対策交付金制度の見直しなどによって、今後大きく 変動する可能性がある点にも留意が必要です。財政力 指数はあくまで現時点のスナップショットであり、 その持続性まで保証するものではありません。
まとめ
人口密度と財政力指数には、対数変換した値で見ると 相関係数0.73という強い正の相関があり、人口が集積する都市ほど 財政基盤が豊かになる傾向は統計的にも裏付けられ ました。一方で、原子力関連施設や観光・製造業と いった特定の産業基盤を持つ過疎地域は、人口密度が 極めて低いにもかかわらず、都市部を上回る財政力を 持つ例外として存在します。人口密度・高齢化率 いずれの角度から見ても、財政力指数の高さを最終的に 決めているのは、その地域の産業構造だという結論に たどり着きます。