財政力指数ランキング分析:なぜ小さな村が全国トップなのか
財政力指数の全国1位は、人口4,600人ほどの愛知県飛島村。大都市ではなく、なぜ小さな村がトップに立つのか。ランキング上位の顔ぶれから、その理由を読み解きます。
公開日:2026年4月10日
データ更新日:2026年7月15日(e-Stat 公開データに基づき自動更新)
🏆 TOP3
財政力指数TOP15
1位は人口約4,600人の村
財政力指数(自治体が自前の税収だけで行政サービスを どれだけまかなえるかを示す指数)の全国1位は、愛知県 飛島村で、指数は2.18です。名古屋市に隣接するこの村は、人口こそ多くありませんが、 臨海部に立地する企業の工場・倉庫群から得られる固定資産税 収入が突出しており、全国平均(0.51)の 4倍以上という、他に類を見ない水準になっています。 総務省の統計では、財政力指数が1.0を超えると地方交付税を 受け取らない「不交付団体」となりますが、今回集計した 全国1,740自治体のうち、1.0を超えているのはわずか84自治体、全体の4.8%にとどまります。
上位に並ぶ、原子力発電所の立地自治体
TOP15を見ていくと、青森県六ヶ所村、北海道泊村、 福島県大熊町、茨城県東海村など、原子力関連施設が 立地する自治体が複数ランクインしていることに気づきます。 これは偶然ではありません。国立国会図書館の調査資料に よれば、原子力発電所などの立地自治体には、発電所の 固定資産税収入に加えて、電源開発促進税を財源とする 「電源三法交付金」が長期間にわたって交付される仕組みが あります。電気事業連合会の解説でも、発電所の運転開始後は 固定資産税をはじめとする税収が長期間にわたって自治体に 入り続けるとされています。
福島県大熊町が上位に入っている点は、特に印象的です。 東京電力福島第一原発の事故により長期の避難を余儀なく された町ですが、原子力政策担当室の資料によれば、 原子力災害からの復興を支援する特別措置法に基づき、 復興関連の財政支援や固定資産税収入が、財政指標を 押し上げる要因になっていると考えられます。財政力指数の 高さは、必ずしも自治体が「豊か」であることを意味する のではなく、その背景にある特殊な事情まで読み解く必要が あることを、この事例は物語っています。
もう一つの顔ぶれ:高級リゾート地と製造業のまち
上位にはもう二つの系統があります。一つは長野県軽井沢町・ 山梨県山中湖村・神奈川県箱根町といった別荘・リゾート地です。 別荘やホテルなど資産価値の高い不動産が多く立地することで、 固定資産税収入が住民数の割に大きくなる傾向があります。 もう一つは、愛知県みよし市・豊田市に代表される自動車 産業の集積地です。大手製造業の工場や関連企業からの 法人住民税・固定資産税が、自治体の税収基盤を厚くして います。千葉県浦安市や東京都武蔵野市のように、都心への アクセスの良さから地価が高く、個人所得水準の高い住民が 多い自治体も、同様の理由で上位に入っています。
財政力指数が低いことは「悪いこと」ではない
財政力指数が低い自治体の多くは、鹿児島県三島村・ 十島村、沖縄県渡名喜村など、離島や山間部の小規模な 自治体です。人口が少なく産業基盤も限られるため、 自主財源だけで行政サービスをまかなうことは構造的に 難しくなります。ただし、総務省の地方交付税制度は、 まさにこうした財政力の弱い自治体の財源を国が補い、 全国どこでも一定水準の行政サービスを受けられるようにする ための仕組みです。財政力指数が低いことは、住民サービスの 質の低さを直接意味するわけではなく、税源の少なさを 国の制度で補完しているかどうかの違いだと理解するのが 適切です。
財政力指数をどう活用するか
財政力指数は、移住先を検討する際の判断材料としても しばしば参照されます。財政力指数が低い自治体では、 将来的に公共施設の統廃合や、住民サービスの見直しが 行われる可能性が相対的に高いという指摘もあります。 ただし、財政力指数だけで自治体の将来性を判断するのは 早計です。今回見たように、指数が高い自治体の中には 原発や工場といった特定の産業に依存しているケースも あり、その産業の将来性次第では、財政力指数が 今後大きく変動する可能性もあります。
財政力指数は、あくまで「現時点での自主財源の豊かさ」を 示す一つの指標です。
財政力指数の計算方法
財政力指数は、総務省の定義によれば「基準財政収入額」 (標準的な地方税収の見込み額)を「基準財政需要額」 (標準的な行政サービスの提供に必要な経費の見込み額)で 割った数値の、過去3年間の平均値として算出されます。 単年の数値だけで判断すると、大型施設の完成や企業の 撤退などによる一時的な変動に影響されやすいため、 3年平均を用いることで、より安定的に自治体の財政力を 比較できるようになっています。本サイトのランキングも、 この総務省の算定方法にもとづくデータを使用しています。