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財政

財政の中身分析:歳入の63.8%を自前で賄う愛知県飛島村、1.7%しかない離島の村

全国1,740自治体の歳入に占める地方税の割合(自主財源比率)を比較すると、全国平均22.1%に対し、1位の愛知県飛島村は63.8%と自前の税収でほぼ運営できている一方、最下位の鹿児島県十島村はわずか1.7%で、財源のほとんどを国からの財政移転に頼っています。

公開日:2026年7月30日

データ更新日:2026年7月15日(e-Stat 公開データに基づき自動更新)

地方税自主財源比率 全国1位
愛知県 飛島村 63.8%

🏆 TOP3

#1
愛知県 飛島村
63.8%
#2
大阪府 田尻町
61.5%
#3
山梨県 山中湖村
60.8%

これまでの財政力指数関連の記事では、財政力指数 という合成指標を使って自治体の財政基盤を比較して きました。今回は、その中身をもう一段階分解し、 歳入決算総額に占める地方税の割合(自主財源比率)を 直接比較します。財政力指数よりも直感的に「歳入の 何%を自前の税収でまかなえているか」が分かる指標 です。同じ財政力指数の自治体同士でも、その内訳を 見ると、大きく異なる財源構造を持っていることが 少なくありません。

自主財源比率TOP15

1. 愛知県 飛島村
63.8%
2. 大阪府 田尻町
61.5%
3. 山梨県 山中湖村
60.8%
4. 京都府 久御山町
60.3%
5. 千葉県 浦安市
57.0%
6. 長野県 軽井沢町
56.1%
7. 愛知県 豊田市
56.0%
8. 神奈川県 中井町
56.0%
9. 茨城県 東海村
55.9%
10. 静岡県 長泉町
55.5%
11. 愛知県 武豊町
55.3%
12. 東京都 武蔵野市
54.4%
13. 愛知県 みよし市
54.1%
14. 神奈川県 箱根町
54.1%
15. 三重県 川越町
54.0%

1位の愛知県飛島村は、名古屋港に隣接し、大企業の 工場・物流施設が集積する「日本一の高所得村」として 知られています。人口はわずか5,000人前後ですが、 企業からの固定資産税・法人住民税によって、歳入の63.8%を地方税だけで賄っています。国からの財政移転に 頼らずとも行政サービスを維持できる、極めて恵まれた 財政基盤を持つ自治体だと言えます。

上位に共通する3つのパターン

TOP15の顔ぶれは、これまでの財政関連記事で見てきた パターンがきれいに再登場します。1つ目は飛島村・ 京都府久御山町・愛知県豊田市・武豊町・みよし市・ 三重県川越町といった、大企業の工場や物流拠点が 集積する「ものづくりの町」です。7位の豊田市は、 産業構造分析の記事で製造業就業者比率の高さを紹介 した、まさにその町です。2つ目は千葉県浦安市(東京 ディズニーリゾート)、長野県軽井沢町、神奈川県 箱根町、山梨県山中湖村といった観光・別荘地です。 3つ目は茨城県東海村で、日本原子力研究開発機構 (JAEA)をはじめとする原子力関連の研究機関が集積 しており、高齢化率と財政力指数の関係を扱った記事 で紹介した原発立地自治体と同じ構造です。

12位の東京都武蔵野市(吉祥寺を含む住宅地)だけは やや毛色が異なり、大企業の工場や観光資源ではなく、 比較的所得水準の高い住民から得られる住民税収入 によって高い自主財源比率を実現しています。

こうした「特定資源依存型」の自主財源比率の高さは、 諸刃の剣でもあります。工場の海外移転や生産縮小、 観光需要の落ち込み、研究機関の統廃合などが起きれば、 地方税収入は大きく減少しかねません。自主財源比率が 高いこと自体が「行政運営が優れている」ことを直接 意味するわけではなく、地理的・産業的な条件に強く 規定された結果である点には注意が必要です。

自主財源比率が低い自治体TOP15

1. 鹿児島県 十島村
1.7%
2. 山梨県 丹波山村
1.7%
3. 福島県 葛尾村
1.9%
4. 鹿児島県 三島村
1.9%
5. 沖縄県 伊平屋村
2.2%
6. 北海道 神恵内村
2.3%
7. 沖縄県 粟国村
2.3%
8. 沖縄県 渡名喜村
2.3%
9. 東京都 御蔵島村
2.4%
10. 新潟県 粟島浦村
2.6%
11. 沖縄県 多良間村
2.6%
12. 島根県 知夫村
2.7%
13. 鹿児島県 大和村
2.7%
14. 熊本県 球磨村
2.8%
15. 和歌山県 北山村
2.9%

最下位の鹿児島県十島村は、歳入のわずか1.7%しか地方税で賄えていません。トカラ列島の7つの 離島からなる村で、人口は700人程度。上位15自治体 はいずれも人口数百人〜2000人程度の離島・山村で 占められており、地方交付税・国庫支出金といった 国からの財政移転がなければ、行政サービスの維持が 極めて困難な状況にあることが分かります。

「自主財源比率が低い=財政が悪い」わけではない

ここで注意したいのは、自主財源比率が低いことが 必ずしも「その自治体の財政運営に問題がある」こと を意味しないという点です。離島や山村は、そもそも 企業立地や大規模な観光開発が地理的・物理的に 難しく、税源そのものが乏しい構造にあります。 地方交付税制度は、こうした税源の乏しい自治体でも 全国一律の行政サービスを提供できるよう、国が 財源を再配分する仕組みであり、自主財源比率が 低いこと自体は、この制度が意図したとおりに機能 している結果とも言えます。

むしろ注目すべきは、上位に並ぶ自治体がいずれも 「特定の産業・観光資源・研究機関」という、地理的 に代替のきかない資源を持っている点です。これは、 自主財源比率の高さが、必ずしも行政運営の巧拙では なく、立地の幸運によってもたらされている部分が 大きいことを示唆しています。

財政関連記事のまとめ

本サイトではこれまで、高齢化率・人口密度・子ども 人口割合という3つの角度から財政力指数との関係を 分析し、いずれも原子力関連施設・観光地・大規模 工場といった特定の産業基盤が「例外」を生む要因 であることを確認してきました。今回、財政の中身を 地方税自主財源比率として直接見ることで、これらの 分析が指し示していた構造が、より明確なかたちで 裏付けられたと言えます。

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データを読むときの注意点

自主財源比率は、歳入決算総額に占める地方税の割合 という単純な計算式で算出しています。歳入には 地方税のほか、地方交付税・国庫支出金・地方債など さまざまな財源が含まれており、自主財源比率が 低いからといって、その自治体の歳入総額そのものが 少ないとは限りません。あくまで「歳入の構成比」を 示す指標であり、歳入の絶対額や住民一人あたりの 歳入水準とはあわせて解釈する必要があります。地方 交付税制度によって歳入総額そのものは一定水準が 確保されている自治体も多く、自主財源比率の低さを そのまま「財政が苦しい」と読み替えるのは早計です。

💬 運営者のひとこと
行政の内側で統計データに触れていた経験から言うと、 財政データは「正しいけれど完全ではない」という 性質を特に強く持つ分野です。数字は各部署が公式に 報告した値である一方、老朽化した施設の更新費用の ように将来発生する負担は、単年度の決算数値には 表れません。また、統計はどうしても市区町村単位の 「全体像」として公表されるため、同じ自治体内でも 地域ごとの財政的な優先順位の違いまでは見えてきません。 データを見るときは、その数字が「今の一時点を切り 取ったもの」であることを、常に意識しておく必要が あると感じています。

まとめ

地方税自主財源比率ランキングでは、全国平均22.1%に対し、上位は50〜60%台、下位は1〜3%台という、 非常に大きな地域差が明らかになりました。上位には 製造業の集積地・観光地・研究機関の立地自治体が 並び、これまでの財政関連記事で見てきた「例外」の 正体を、より直接的な指標で確認できる結果となり ました。同じ日本の自治体でも、財源構造はこれほど までに多様です。

筆者について:元自治体職員・現データコンサルタント。行政・民間で10年以上、 統計データの分析と可視化に携わっています。運営者情報を見る →
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