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財政

経常収支比率ランキング分析:原発立地自治体はなぜ強く、夕張市はなぜ最下位なのか

財政の余裕度を示す経常収支比率を全国1,740自治体で比較すると、全国平均88.6%に対し、上位には原子力発電所を抱える町村、下位には財政破綻の歴史を持つ北海道夕張市が並びました。人口30万人以上の大都市に絞ると、東京23区と愛知県豊田市の強さが際立ちます。

公開日:2026年8月6日

データ更新日:2026年7月15日(e-Stat 公開データに基づき自動更新)

経常収支比率 全国1位(最も健全)
北海道 泊村 44.5%

🏆 TOP3

#1
北海道 泊村
44.5%
#2
福島県 広野町
56.3%
#3
北海道 天塩町
58.8%

経常収支比率は、人件費や扶助費など毎年必ずかかる 支出が、地方税などの経常的な収入のうちどれだけを 占めているかを示す指標です。財政力指数とは違い、数字が低いほど「新しい事業に回せる財政的な 余裕がある」ことを意味します。全国1,740自治体の平均は88.6%でした。

財政に最も余裕がある自治体TOP12

1. 北海道 泊村
44.5%
2. 福島県 広野町
56.3%
3. 北海道 天塩町
58.8%
4. 新潟県 刈羽村
61.9%
5. 北海道 中頓別町
61.9%
6. 福島県 大熊町
62.0%
7. 福井県 高浜町
63.1%
8. 東京都 中央区
64.6%
9. 北海道 乙部町
66.5%
10. 長野県 下條村
67.0%
11. 長野県 泰阜村
67.1%
12. 山口県 周防大島町
67.2%

上位には、北海道泊村・福井県高浜町・新潟県刈羽村 など、原子力発電所を抱える町村が並びます。電源 立地地域対策交付金や、発電施設にかかる大きな固定 資産税収入によって、人口規模に比べて財政的な余裕が 大きくなっているためです。財政力指数ランキング分析 の記事でも触れましたが、特定の産業・施設に支えられた 自治体は、一般的な人口統計だけでは説明できない財政の 強さを持つことがあり、経常収支比率でも同じ傾向が はっきりと確認できました。

逆に財政が厳しいのは、財政破綻の歴史を持つ夕張市

1. 福島県 新地町
124.1%
2. 北海道 夕張市
123.5%
3. 大阪府 泉佐野市
104.4%
4. 福岡県 嘉麻市
102.5%
5. 大阪府 堺市
102.4%
6. 宮城県 石巻市
101.1%
7. 神奈川県 湯河原町
100.8%
8. 神奈川県 三浦市
100.6%
9. 福岡県 田川市
99.9%
10. 神奈川県 南足柄市
99.8%

全国最下位は福島県 新地町で、124.1%と、経常収入だけでは経常支出を賄いきれない 「自転車操業」の状態にありました。2007年に財政 再建団体(財政破綻)となったことで知られる北海道 夕張市も僅差で続いており、下位には大阪府泉佐野市・ 福岡県田川市・宮城県石巻市など、ふるさと納税を めぐる問題や震災復興など、それぞれ個別の事情を 抱えた自治体が並んでいます。

大都市の中では、東京23区と豊田市が強い

1. 東京都 中野区
70.4%
2. 愛知県 豊田市
71.1%
3. 東京都 江戸川区
71.7%
4. 東京都 江東区
74.7%
5. 東京都 品川区
74.8%
6. 東京都 足立区
75.9%
7. 東京都 葛飾区
77.0%
8. 東京都 板橋区
77.4%
9. 東京都 世田谷区
79.0%
10. 東京都 杉並区
79.8%

人口30万人以上の大都市86自治体だけで比較すると、上位10自治体のうち9自治体を東京都の特別区が占めました。もう一つ目を 引くのが2位の愛知県豊田市です。トヨタ自動車の 本社・工場が立地する「企業城下町」として知られ、 製造業の集積による安定した税収が、財政の余裕度に 直結しています。

💬 運営者のひとこと
財政関連の資料を扱っていたころの実感として、経常 収支比率は財政力指数よりも「今、その自治体が身動き を取れるかどうか」を生々しく映す指標だと感じます。 財政力指数が高くても、経常収支比率も同時に高い 自治体は、収入は豊かでも新しい施策に回す余裕が ほとんどないという状態になりがちです。逆に財政力 指数がそれほど高くなくても、経常収支比率が低く 抑えられている自治体は、身の丈に合った堅実な財政 運営をしていると言えます。1つの指標だけで自治体の 財政を判断せず、複数の指標を組み合わせて見ることの 大切さを、この2つの指標の対比からあらためて感じます。

財政力指数が高くても、経常収支比率が低いとは限らない

もう一つ興味深いのは、経常収支比率と財政力指数の 関係です。一般的には、財政力指数が高い(税収が 豊かな)自治体ほど経常収支比率も低く抑えられそうに 思えますが、実際には両者の相関はそれほど強くは ありません。税収が豊かでも、都市インフラの維持費や 社会保障費の負担が大きい自治体では、経常収支比率が 高止まりすることがあります。逆に税収がそこまで 豊かでなくても、身の丈に合った歳出管理を徹底して いる自治体は、経常収支比率を低く保てています。

目安となる「80%」「100%」というライン

総務省の目安では、経常収支比率は都市部で80%程度、 町村部で70%程度が望ましいとされ、90%を超えると 財政の硬直化が始まっていると見なされます。今回の 全国平均88.6%は、この目安をやや上回る水準であり、多くの自治体で 財政に余裕がない状態が常態化していることを示して います。100%を超える自治体は、経常的な収入だけでは 経常的な支出すら賄えておらず、基金の取り崩しや 臨時の財源に頼らざるを得ない状況にあります。

小規模町村ほど数値が振れやすい点にも注意

経常収支比率は、分母となる経常一般財源の規模が 小さい自治体ほど、大型の公共施設整備や職員数の 増減といった一時的な要因で数値が大きく動きやすい という性質があります。今回上位に入った町村の中にも、 原発関連の交付金という特殊要因が数値を押し上げて いる例が多く含まれているため、必ずしも「行政運営が 特別優れている」ことを意味するわけではありません。 あくまで、その時点での財政の余力を測る一つの ものさしとして捉えるのが適切です。

まとめ

経常収支比率ランキングからは、原子力発電所という 特定の施設に支えられた小規模な町村の財政的な強さと、 過去の財政破綻や近年の財政問題を抱える自治体の 厳しさという、両極端な姿が見えてきました。大都市の 中では、行政改革を進めてきた東京23区と、安定した 製造業を持つ豊田市が高い水準を維持しています。財政 力指数とあわせてこの指標を見ることで、自治体の 財政の「豊かさ」と「柔軟さ」を、より立体的に 理解することができます。

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筆者について:元自治体職員・現データコンサルタント。行政・民間で10年以上、 統計データの分析と可視化に携わっています。運営者情報を見る →
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